春の保育園 ~ゴールデンウィークに向けて~

寒かった冬が終わり、桜をはじめとした花が咲く春。重く厚いコートを脱ぎ、体も軽くなったように感じます。4月は日本の組織体では年度の始まりとなるため、学校、企業では新入生、新入社員が新しい風となり、組織を活性化します。
保育園でも新年度は特別です。3月から4月、月が替わっただけなのですが、5歳児が卒園し、各年齢の子どもたちは進級、職員は新クラスに配属となり、気持ちも新たにスタートします。そして何より、1年で一番多くの新入園児を迎えるのが4月となります。今回は春の保育園についてお伝えしたいと思います。
4月に入園されるお子さまの多くは低年齢(0,1歳)児、自治体にもよりますが、保護者の方は5月に育児休業から復帰されます。長い方ですと1年以上お子様と一緒に過ごしてきた保護者の方にとって保育園入園は「保活」の先にある「ゴール」です。しかし、実際のところは「ゴール」ではなく「スタート」です。
4月初旬
まず、子どもは今まで、基本「おうち」中心の生活しか知らなかったところに、自分の意思ではなく、知らない他人ばかりの中にまさに「放りこまれる」わけで、それはそれは心細いことでしょう。多くの保育園では、基本的に授乳(食事)、入眠、遊びはその子のペースに合わせて行います。一見すると家庭と同じようですが、子どもは違いを察知します。自分の気持ちを伝えられない子どもはグズリ泣きをするしかないので、終始機嫌が悪くなります。一人が泣くと、つられて泣く子どももいて大合唱?春の風物詩です。
4月中旬
保育園ではいわゆる「慣らし保育」というものがあります。預かり初期は突然死を発症する危険も高いため、お子様に合わせて無理がないよう段階的に保育時間を延ばしながら保育をしますが、気候が不安定な春、環境変化等様々な要因から子どもは体調を崩します。これは避けては通れぬ過程です。もちろん、保育園では、適宜薬剤を使用した清掃を行っていますが、感染力の強さと免疫力の弱さが相まって乳児クラスは感染症が流行しやすい環境です。保護者の方は先輩ママから聞いてはいたけど、こんなに早く?と思うでしょう。たいてい消化器系、呼吸器系に症状が現れます。対応が早く、病院受診し、安静にすれば2~3日で復帰できることが多いです。感染症の無限ループに巻き込まれないよう、無理は禁物です。
そうこうしている間にゴールデンウィークに突入して、お子様も保護者の方も、保育園生活がリセットされます。ゴールデンウィーク明けからいよいよ保護者の方は本格的に復帰となりますが、お子様は「保育園に行きたくない」と泣いて主張します。ここにきて、保護者の方もかわいい我が子の涙と復帰しなければならないという間で気持ちに余裕がなくなります。これが5月です。あれだけシミュレーションしたのに、上手くいかない・・・保護者の方によっては笑顔がなくなり、表情に不安といら立ちが現れ、朝泣き出す方もいます。 「はい!(お子様を)ぎゅーってして、(保護者の方)いってらっしゃーい!」ここは大人も子どもも気持ちの切り替えが大切です。
サポーター
そんな時いつも楽しそうなのが祖父母の皆さまです。かわいい孫のためなら!と、ご家族の協力が得られるなら、ここはお願いしたいところです。 しかし、それぞれご事情もありますので、例えば、シッターさん、病児保育、ご友人、地域のサポート制度、会社の子育て支援制度の利用等フルに備えておくことが得策です。 仕事を継続するためには割り切りも必要で、育児だけでなく家事に関する代行等に絡む出費も必要経費です。妊娠中から出産・育休中、周りの理解あって復帰があり、これから先があります。私はこの過程こそが「みんなで子育て」だと考えます。
信頼関係を構築するために
さて、こうしてお子様と保護者の方の状況を見てきましたが、保育園でも新しいスタッフを交え、新たなメンバーによるチームワーク形成の時期になります。
同じ保育園内でも担当やクラスが変われば配慮や注意すべきポイントも異なり、前年と同じようにはいきません。まずは子どもと保護者の方との信頼関係構築からスタートです。
きっかけとなる懇談会は、担任の自己紹介、1年間のクラス経営、子どもの発達、伝達事項を伝え、保護者同士の懇談の機会も設けます。
お互いの緊張を解く良い機会ですが、保護者の方の有休日数の問題もあり、「絶対に休んで参加しなければならない」優先順位が高い行事であるかというと微妙なところです。
しかし、今年度より育児・介護休業法の改正により、両立支援に向けた措置が講じられると思いますので、利用の幅も広がります。お便り等文字で伝えることは大切ですが、言葉や動画で伝わることもあります。
保育園では日程の調整、他の行事と併せて保護者の方が参加したいと思えるような企画とする、仕事中に少し抜けてwebで参加できるような形式とする等、効果重視の工夫が必要です。
保護者の方もぜひ参加して実際に担任の人となりを知ると同時に、普段お迎え時間が異なりなかなか会えない保護者の方ともお話ししてみてください。

厚生労働省:育児・介護休業法 改正ポイントのご案内
保育園熱とは
嘘みたいな本当の話で不思議なのですが、子どもは、保育園で発熱し、お迎え、帰宅するとすぐ解熱する(している)ことがあります。筆者の勤務していた園の嘱託医はこれを「保育園熱」と呼んでいました。 保育園からの連絡によって慌ててお迎えしたのに、帰宅して子どもがケロリとしていたら、本来なら「ああよかった」と安堵するはずなのに、本当に熱があったのか?と保育園の対応を疑いたくなる保護者の気持ちも理解できます。 しかし、保育園でのお迎えの判断は慎重で、検温は複数回行いますし、発熱だけではなく、食欲や活動時の様子等お子様の状態を総合的に判断します。では、この事態はナニ?といえば、もちろん感染症の前駆症状かもしれませんが、 これは子どもなりの「お家で休みたい」という一種の表現の可能性があります。医学的には「心因性発熱」というものです。保育園は子どもにとって楽しい場所ですが、大人の会社同様、社会生活の場です。 保護者の方がお迎えに来てくれた瞬間の子どもの表情の変化をみると緊張が解けるのが分かります。大人が思うより子どもは繊細です。やはり「おうち」が一番なのです。
まとめ
ゴールデンウィークもあり、陽気が良くなるとリフレッシュを兼ねて出かけたくなります。しかし、大人はある程度自分をコントロールして体力を温存したり、疲労を回避できますが、子どもはそうはいきません。出先で怪我をする子ども、近年のバーベキューブームによって火傷をする子どもは受け入れ時に注意が必要です。全力で遊び、休み明け、疲れを引きずったまま登園する子どもはたちまち体調を崩し、しっかり治さないと、長引きます。保育園生活と保護者の就労はお子様の健康ありきで成り立つといっても過言ではありません。筆者はゴールデンウィークだけでなく連休前のお便りではお子様とのお出かけは、自宅に戻って最低1日はゆっくりと過ごしていただきたいと、毎年お伝えしてきました。お子様との思い出作り、様々な体験は貴重ですが、楽しいものとなるよう余裕ある計画を立てていただきたいものです。

