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園の就業規則は最新ですか?

皆さんの中には、指導監査の際に「就業規則や各種規程が古い」との指摘を受けた園も
あるのではないでしょうか。園では、定期的に、自治体による指導監査があります。
指導監査がまだ行われていない場合でも、規則の内容が古いと、
法改正に対応していない園運営をしているかもしれません。
今回は、ここ数年であった、主に労働関係法令に関する法改正をご案内しますので、
皆さんの園の規則が最新のものとなっているのか、ご確認いただければと思います。
(令和6年8月時点)

目次

  1. そもそも就業規則とは
    1. 就業規則はなぜ必要なのか
    2. 記載すべき事項
    3. 労働基準監督署への届け出
    4. 園での周知
  2. 最新の法改正
  3. 最後に

1.そもそも就業規則とは

(1)就業規則はなぜ必要なのか

まずは、就業規則とは何かを確認したいと思います。
就業規則とは、労働条件や職場内の規律を記載したもので、
常時雇用する労働者が10人以上の場合には、作成届出が義務づけられています。

就業規則がないと、たとえば、職員から「親族が亡くなったのですが、忌引き休暇はありますか。」
との相談があった時に園長が判断をすることになり、前任の園長と今の園長とで、
日数や、有給/無給の取り扱いが異なるといった事態にも陥りかねません。
それを繰り返していると、職員からの不信感にもつながってしまいます。
そうならないためにも、就業規則を作成し、労働条件等を明記してください。

なお、労働者数が常時10人未満の場合には、就業規則の作成届出の義務はありませんが、
指導監査の際には、就業規則の存在とその内容の確認を受けることが多いと思いますので、
園においては10人未満であっても、作成は実質必須だと感じています。

(2)記載すべき事項

法的には、就業規則に次の項目を記載せねばなりません。

  • 絶対的必要記載事項…必ず記載しなければならない事項
  • 相対的必要記載事項…園で定めをする場合には、記載をしなければならない事項

(出典:厚生労働省リーフレット「就業規則を作成しましょう」より。)

(3) 労働基準監督署への届け出

就業規則等を作成した後は、管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
この「就業規則等」には、「非常勤職員就業規則」など常勤職員以外に適用される就業規則はもちろんのこと、
「給与規程」や「育児介護休業規程」、「旅費規程」など関連する諸規程も含まれますので、
注意してください。

そして、労働基準監督署に届け出る際には、就業規則そのものの他に、
「就業規則(変更)届」と「意見書」も必要になります。
このうちの「意見書」については、従業員代表として、従業員の過半数を代表する者より
意見をもらってください。なお、管理監督者は従業員代表となることができません。

(4)園での周知

労働基準法では、就業規則の労働者への周知が義務付けられています。
そして、この「周知」は、就業規則等を作成・変更した時だけ周知すれば良いというわけではなく、
職員が就業規則の内容をいつでも確認できる状態にしておく必要があります。
具体的には、周知の方法について、下記のいずれかによるものとされています。

(出典:厚生労働省リーフレット「就業規則を作成しましょう」より。)

過去の判例では、就業規則の改訂を行い、労働基準監督署へ届出をしていたとしても、
労働者への周知に不備があって、就業規則の内容が無効と判断されたケースもあります。
就業規則を労働基準監督署に届け出て、一安心される先生も多いと思いますが、この周知は、
とても重要なプロセスであることを知っておいてください。

2.最新の法改正

では、ここ数年の法改正をいくつか紹介します。
皆さんの園の就業規則等と照らし合わせて確認をしてください。

(1)就業規則関係

①年5日の年次有給休暇取得の義務化(平成31年4月施行)

平成31年4月より、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に
対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して
取得させることが義務付けられました。なお、この「年5日」には、労働者が自らの申請により
取得した日数も含まれます。

皆さんの園には、なかなか年次有給休暇を取得できない職員もいるのではないでしょうか。
この法改正では、職員からの有休申請を待つだけでなく、職員の希望を聴き、それを尊重した上で、
園側が取得日を指定することができるようになりました。具体的なやりとりとしては、

園 :「いつなら、年次有給休暇を取れそうですか。」
職員:「2月上旬から中旬からであれば、行事の端境期なので、取りやすいかなと思います。」
園 :「分かりました。では、2月×日と×日に取得をしてください。」

みたいな感じでしょうか。
こういったやりとりができれば、なかなか年次有給休暇を取得できない職員も、
取得することができそうです。ただし、この運用を行うには、就業規則への記載が必須になります。
国のひながたを参考にしてください。

(出典:厚生労働省リーフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」より。)

(2)給与規程(賃金規程)関係

①処遇改善等加算Ⅲに関する手当の明記
保育分野において、令和4年2月より処遇改善等加算Ⅲの運用が始まりました
(当初の名称は「処遇改善臨時特例事業」)。処遇改善等加算Ⅲによる賃金改善見込額の
総額の2/3以上は、基本給又は毎月決まって支払われる手当の引上げにより、
支給をしなければなりません。そのため、給与規程に、この「2/3以上」の部分の支給方法を
明記する必要があります。

②割増率
令和5年4月より、中小企業において、時間外労働が月60時間を超えた場合には、
その分の割増賃金率については25%以上から50%以上に引き上げられました
(大企業では、平成22年4月より施行)。よって、法人の規模を問わず、
時間外労働が月60時間を超えた場合に、割増賃金率が50%未満で計算されていれば、
法違反となります。
なお、給与規程でも、月60時間を超えた場合の割増賃金率を記載しておくのが望ましいですが、
「時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)」で、そもそも月60時間を超える
時間外労働が想定されていないのであれば、記載を省略することも考えられます。

これら以外にも、指導監査においては、実際の支給額が給与規程の記載と即していないといった
指摘もよく見かけます。新たな手当を設けたり、既存の俸給表や手当の金額を変更した場合には、
給与規程の見直しもセットで必要になることを忘れずにいてください。

3.最後に

今回は、就業規則と給与規程に関連する、直近の法改正や制度改革をまとめました。
また、これ以外にも、育児介護休業法の法改正も頻繁にあり、育児介護休業規程が
最新の法律に対応していない園もよく見かけます。くわえて、令和7年にも、
育児介護休業法の改正施行が予定されていますので、引き続き、法改正の動向を意識してください。
(育児介護休業法の法改正の内容は、本サイトにて別途ご案内する予定です。)

適正な法人運営のために、また、急に指導監査の通知が来ても慌てないように、
就業規則等が最新になっているかを日頃から意識していただきたいです。

ライター紹介
多田善雄
多田 善雄
社会保険労務士・中小企業診断士
株式会社 福祉総研 取締役
HP:https://fukushi-soken.com/

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