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正しい給与計算のために行う給与ソフト設定の基本

2025.03.26
正しい給与計算のために行う給与ソフト設定の基本

給与計算は法人のミスの許されない業務の一つです。しかし、様々な法令や計算式が絡むため、ミスが起こりやすい業務でもあります。そこで、給与計算を正確に行うための給与ソフト設定の基本について解説いたします。

1.基本給・手当額の設定

4月に入り、昇給による基本給の変更や各種手当額の変更を行ったかと思います。手入力で変更すると誤りの原因となります。 使用されているソフトへ、CSVファイル等からのデータ取り込みを利用し変更を行いましょう。 データ取り込みを行う場合でも手入力される場合でも、他の職員へ依頼し、正しく変更されているか確認を行ってもらうようにすることも誤りを減らすために重要です。

2.給与項目の所得税・労働保険の設定

給与項目の中には所得税を課税するもの、非課税にするものがあります。同様に労働保険の対象になるもの、対象にならないものがあります。特徴的なものは通勤手当です。
通勤手当は所得税非課税の範囲であれば所得税は非課税となりますが、労働保険に関しては、所得税が非課税であっても全額労働保険の対象となります。正しく設定されているか見直しましょう。
下表のように、自動車や自転車などの交通用具を使用している職員に支給する通勤手当に関しては、通勤距離に応じ所得税非課税範囲が定められております。所得税非課税範囲を超えて通勤手当を支給している場合は、所得税が課税される分の通勤手当と所得税非課税分の通勤手当とが正しく登録されているか確認が必要です。 給与ソフトの中には通勤距離を登録すると、自動で課税・非課税範囲を分けて計算してくれるものもあります。その場合は、必ず通勤距離を登録するようにしましょう。

通勤手当

通勤手当の非課税限度額の引上げについて|国税庁
※ガソリン代の上昇により、自動車や自転車などの交通用具を使用している職員に支給する通勤手当の非課税範囲の拡大が検討されています。今秋から開始することが検討されているようですが、正式決定には至っておりません。最新の情報を入手し、ご対応ください。

3.被扶養者設定

職員から提出された給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を基に被扶養者設定を行います。4月に入り、職員の子どもが就職等で被扶養者から外れるケースが多くあります。職員に被扶養者の変更が無いか改めて確認し、正しく設定を行いましょう。正しく設定を行うことで所得税額が適正に計算されます。

4.割増賃金の設定

  1. ① 割増賃⾦の基礎となる賃⾦から除外できるもの
  2. 割増賃⾦の基礎となる賃⾦から除外できるものは、「家族手当」「通勤手当」「別居手当」「子女教育手当」「住宅手当」「臨時に支払われた賃金」「1か⽉を超える期間ごとに⽀払われる賃金」のみ、と法令で定められています。これらの手当が割増賃金の計算に含まれていないか確認してください。
    また、名称が上記のものであっても「家族⼿当」「通勤⼿当」「住宅⼿当」については、除外できない場合もありますので下記の例を確認ください。
    1. 〇「家族手当」除外できない例:
    2. 扶養家族の有無、家族の人数に関係なく一律に支給するもの
    3. 〇「通勤手当」除外できない例:
    4. 通勤に要した費用や通勤距離に関係なく一律に支給するもの
    5. 〇「住宅手当」除外できない例:
    6. 住宅の形態ごとに一律に定額で支給するもの
  3. ② 割増賃⾦の基礎となる賃⾦の設定
  4. ①から除外した以外の基本給及び手当が、割増賃⾦の基礎となる賃⾦に全て含まれているか確認ください。 4月に給与規程を改定し新たな手当を増やした場合は、新たな手当も含まれているか必ず確認ください(ここが漏れてしまうケースが多く見受けられます)。 加えて、年間の所定労働時間が年度毎に変わる場合は、年間の所定労働時間が正しく設定されているかの確認も必要です。
    給与を当月締め当月払いにより支給されている場合は、割増賃金を翌月支給にされているかと思います。4月に支給される割増賃金の基礎は、3月に支給された基本給及び手当です。基本給の昇給や手当額の変更により4月から給与が変わっている場合でも、4月に支給する割増賃金の基礎が3月に支給された前月給与の設定になっているか確認ください。
    ※勤務形態により給与締日、支払日が違う場合はそれぞれに設定が必要です

5.遅刻・早退控除、欠勤控除の設定

割増賃金とは異なり、遅刻・早退控除、欠勤控除の計算の基礎となる賃⾦は、法令で定められておりません。給与規程で定められている計算式が正しく設定されているか確認ください。
割増賃金と同様ですが、年間の所定労働時間、給与を当月締め当月払いにより支給されている場合の控除の計算の基礎が前月に支給された基本給及び手当になっているか、勤務形態による給与締日、支払日が違う場合もそれぞれに設定されているかも確認ください。

6.健康保険料率の設定

健康保険料率は毎年3月分から変更となります。原則である社会保険料翌月控除の場合は、 4月給与から社会保険料率変更、3月に一時金を支給された法人は3月一時金から社会保険料率変更の設定になられているか改めて確認ください。 3月の一時金支給の際に、2月分までの社会保険料率で計算されているケースが多く見受けられます。
また、3月末退職職員の健康保険料額が正しく控除されているかもご確認ください。 社会保険料翌月控除の場合、3月末退職の職員からは2月分と3月分の健康保険料2か月分が控除されていると思います。 2月分と3月分で料率が違いますので、単純に2月分×2の金額とはなりません。

7.雇用保険料率の設定

令和7年4月から雇用保険料率が変更となっております。一般の事業の雇用保険料率は、労働者負担5.5/1,000、事業主負担9/1,000となります。原則、令和7年4月給与から適用になりますので、4月給与計算時に雇用保険料率が変更の設定になっているか改めて確認ください。
雇用保険料率の変更のタイミングは「令和7年4月1日以降に最初に到来する締日により支給される給与」からとなります。当月末締め(3月末締め)翌月払い(4月払い)の給与の場合は、令和7年4月支給の給与までは、令和6年度までの雇用保険料率が適用となりますので、設定にご注意ください。

雇用保険料率

令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内

8.まとめ

今回解説したものはあくまで基本の部分です。基本の部分だけでも注意する点は多岐にわたっていたと思います。年度始めに正しく給与ソフト設定されておりますと、年度途中で誤りに気付き、遡及して修正を行う手間を防げます。何よりも正しく計算されていることが職員との信頼関係にも繋がります。
本記事を正しい給与計算のための参考にして頂けますと幸いです。

ライター紹介
安田将太
安田 将太 氏
社会保険労務士
株式会社 福祉総研
HP:https://fukushi-soken.com/
株式会社 福祉総研