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育児介護休業法が変わります-後編-

2025.02.21
育児介護休業法が変わります-後編-

前回のコラムでは、令和7年4月に改正施行される、育児・介護休業法の内容について説明をしました。 今回は、前回の続きとして、令和7年10月に施行される内容と、雇用保険の給付金の手続き変更などについて、説明します。

1.法改正の内容(おさらい)

施行日改正事項
令和7年4月1日(1) 子の看護休暇の見直し
(2) 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
(3) 育児休業取得状況の公表義務適用拡大
(4) 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
(5) 介護離職防止のための雇用環境整備、
介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
令和7年10月1日(6) 柔軟な働き方を実現するための措置等
(7) 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮

(6) 柔軟な働き方を実現するための措置等

3歳から小学校就学前の子を養育する職員が仕事と子育ての両立ができるよう、令和7年10月以降、法人は、下記の5つの中から2つ以上の措置を選択して講ずる必要があります。 その上で、3歳から小学校就学前の子を養育する職員は、その2つ以上の中から1つを選択して利用することができます。

  1. ① 始業時刻等の変更
  2. ② テレワーク等(10日以上/月)
  3. ③ 保育施設の設置運営等
  4. ④ 就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇 (養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)
  5. ⑤ 短時間勤務制度

なお、法人が5つの中から2つ以上の措置を選択する際、過半数労働組合や職員代表からの意見聴取の機会を設ける必要があります。ただし、聴取した意見に必ずしも応じる必要はありません。

現時点においても、「小さい子を持つ職員には、シフトのうち早番シフトと遅番シフトを免除している」といったような配慮をされている園も多いのではないでしょうか。 令和7年1月23日に、厚生労働省より公表されたFAQ(改訂版)によると、このような配慮も、上記『①始業時刻等の変更』に該当します。
その他、補足として、④養育両立支援休暇は、無給でも問題ありません。
また、⑤短時間勤務制度は、現状子が3歳になるまでは、育児・介護休業法により実施義務があります。 その制度を小学校就学前まで延長するわけですので、制度としては導入しやすいかと思いますが、一方で、園の人手不足を助長する恐れもあり、園運営を見据えた慎重な判断が必要となります。

10月施行ということもあり、追加のFAQが公表されることも想定されます。 いずれを選択するかを迷われた場合には、拙速に決めるのではなく、職員の意見を聴きながら、職員の育児と仕事の両立に資する項目を選択していただければと思います。

(7) 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮

法人には、「妊娠・出産の申出時」や「子が3歳になる前」に、職員の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取が義務付けられました。 そして、聴取した意向についても、法人の状況に応じて配慮することが義務付けられました。
意向聴取の時期等については、下表を確認してください。

意向聴取の時期等

(厚生労働省リーフレット「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」より)
引用元: https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdfの⑪

なお、一連の育児・介護休業法の改正施行に伴い、各園の「育児・介護休業等に関する規則」を改訂する必要がありますので、ご注意ください。

2.雇用保険の給付の変更

令和7年4月より、雇用保険の育児関係の給付金についても、新設ならびに手続きの変更が予定されています。具体的には、下表の通りです。

施行日改正事項
令和7年4月1日(1) 育児休業給付金の延長時の手続き変更
(2) 出生後休業支援給付金の新設
(3) 育児時短就業給付金の新設

(1) 育児休業給付金の延長時の手続き変更

① そもそも「育児休業給付金」とは?

まずは、給付要件と給付額を確認しましょう。

<給付要件(原則)>
  • 雇用保険に加入し、育児休業(※)を取得していること
  • 原則、育児休業(※)を開始する日の前2年間において、雇用保険に加入し、11日以上勤務した月が12ヵ月以上あること。
  • 支給単位期間(育児休業を開始した日から1か月ごとに区切った期間。)において、就業日数が10日以下または就業した時間数が80時間以下であること。

(※)育児休業の期間:育児休業を開始してから子が1歳になるまで。ただし、子が1歳になる時点で保育所等に入れなかった場合にはもう6ヵ月、1歳6ヵ月になる時点で保育所等に入れなかった場合にはさらにもう6ヵ月、つまり子が最長2歳になるまで、延長をすることができます。

<給付額>
  • 180日目までは、賃金日額(≒休業前の1日当たり賃金)の67%
  • 181日目以降は、賃金日額の50%

② どう変わる?

保育所等の利用申し込みが、速やかな職場復帰のために行われたものであることを確認すべく、制度変更が行われます。
変更が生じるのは、延長のタイミングです。つまり上記の文章で言うと、「子が1歳になる時点」と、「1歳6ヵ月になる時点」の話です。

これまで、育児休業給付金の延長手続きとしては、
 ・市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)
の添付が必要でした。令和7年4月以降は、これにくわえ、
 ・市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し と、
 ・『育児休業給付金支給対象期間 延長事由認定申告書』
の添付も必要になりました。いずれも育休中の職員が準備することとなります。

特に『育児休業給付金支給対象期間 延長事由認定申告書』では、「自宅」と、「申し込みをした、自宅から最も近隣の保育所等」の通所時間が30分未満かどうかの確認がなされます。 30分以上の場合には、近隣の保育所等に申し込まない理由を選択・記入する必要があり、それをもって、ハローワークが審査を行います。

参考:『育児休業給付金支給対象期間 延長事由認定申告書』
https://www.mhlw.go.jp/content/001269654.pdf

他に、2種類の給付金が新設されます。((2)(3))

(2) 出生後休業支援給付金の新設

子供の出生直後に、両親が共に育児休業を取得することを支援するための給付金です。

<給付要件>
  • 母親:産休終了後から8週間以内に、14日以上の育児休業を取得すること
  • かつ
  • 父親:出産後から8週間以内に、14日以上の育児休業を取得すること
<給付額>
  • 父母ともに、賃金日額(≒休業前の1日当たり賃金)の13%が、最大28日間給付されます。

つまり、通常の育児休業給付金(67%)と合わせて、計80%が給付されることになります。
なお、たとえば職員の配偶者が、「就労していない」「自営業やフリーランスである」など、育児休業を取れない場合であっても、申請書類に配偶者の状態を記入し、配偶者の状態を確認できる書類を添付することで、当該職員も出生後休業支援給付金を受けることができます。

(3) 育児時短就業給付金の新設

もう一つ、育児時短を利用する職員が対象となる給付金も新設されます。

<給付要件>
  • 2歳未満の子どもを養育するために、育児時短を利用していること
<給付額>
  • 原則、育児時短中に支払われた賃金の原則10%が給付されます。

たとえば、1日8時間勤務で月の賃金が20万円の職員が、6時間の時短勤務を選択した場合、月の賃金は15万円(=20万円×6/8)となりますが、これに対する10%、つまり1万5千円が給付されることになります。

3.最後に

2回に渡り、育児・介護休業法の改正と、各種給付金の新設・制度変更について説明をしました。 今回の法改正の一番の目的は、育児や介護と仕事の両立を支援することです。このことからも、少子化とは言え、日本において園が果たす役割や重要性はさらに高まると感じています。
くしくも、人事院勧告の過去最大の上げ幅により、職員の処遇が大幅に改善されるタイミングでもあります。 職員さん方に対しては、法改正の制度説明のみならず、今の日本社会において、園が果たす意義・役割も伝えていただければと幸いです。

ライター紹介
多田善雄
多田 善雄 氏
社会保険労務士・中小企業診断士
株式会社 福祉総研 取締役
HP:https://fukushi-soken.com/
株式会社 福祉総研