令和7年度の人勧はどうなる?保育園運営への影響とは
毎年、「今年の人勧はどうなるのだろうか」と、気にされている園も多いと思います。特に、ここ数年の人勧はUP率が高く、職員への支給の仕方に苦慮されていることと思います。
令和7年8月に、国家公務員の人事院勧告が公表されましたので、今回は、人勧の考え方を確認するとともに、今年度の人勧についても触れたいと思います。
(※本コラムでは、国家公務員の人事院勧告を「人事院勧告」、保育施設における人事院勧告を「人勧」または「人勧分」と表記して、解説します。)
1.「人事院勧告」とは何か
(1)本来の「人事院勧告」とは
人事院は毎年、全国の民間企業を対象に、約50万人分の給与データを収集した上で、国家公務員の給与と民間企業の給与との比較をしています。そして、国家公務員の給与や勤務条件の改善を目的に、人事院が毎年国会と内閣に対して、給与改定の勧告を行います。これを「人事院勧告」と言います。
2025年の勧告では、以下のような内容が盛り込まれました。
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月給の平均引き上げ率:3.62%(15,014円)
→ これは1991年以来、34年ぶりの高水準です。 -
初任給の引き上げ
一般職(高卒):+12,300円 → 月額200,300円
一般職(大卒):+12,000円 → 月額232,000円
ボーナス(期末・勤勉手当)の年間支給月数
4.60月分 → 4.65月分に引き上げ
(2)人事院勧告が、保育施設にどう影響を与えるのか
国から園に入金される「公定価格(施設型給付費)」の中には、『保育士、一人いくら』というような基準が設定されています。人事院勧告の影響を受けて、その基準が変動するわけですので、国から園に入金される施設型給付費の金額も増減し、最終的にはその増減分が、職員の賃金に反映されることになります。
つまり、まとめると、次のようなロジックで、保育士の賃金が変動するわけです。
(賃金が上昇する場合で、示します。)
令和7年度の人勧の改定率は、令和7年秋頃に公表される見込みです。職員に支給すべき金額の計算ができるのも、当然、人勧の改定率の公表後ですので、令和7年度の人勧を、令和7年度末(令和8年3月)前後に、賞与・一時金として、まとめて支給をされる園が多いと思います。
さらに昨年度(令和6年度)は10.7%という大幅な改定率でした。園の資金繰りを意識して、差額精算の入金後、具体的には令和7年度に入ってから、職員に一時金として支給された園も多かったと思います。
2.令和7年度の人勧は?
下の図は、子ども家庭庁が作成している資料です。今回お伝えしている人勧は、オレンジ色の部分に該当し、この図が示す通り、特にここ2年間は、その上昇幅も非常に大きいことが確認できます。
(令和5年度:14.2%と9.0%の差 5.2%
令和6年度:24.9%と14.2%の差 10.7%)
ちなみに、青・赤・緑は、処遇改善等加算に該当します。
(出典:子ども家庭庁「保育士等の処遇改善の推移」より)
オレンジ色の人勧分に注目すると、年々上昇してきた中で、コロナ禍の時期に一度下がったり・・・という推移を繰り返しながら、基準となるH24年度から累計すると、合計で24.9%上がったことになります。つまり、H24年度から、ベースアップ(基本給の改定や、手当の新設など)を一切行っていない場合には、この24.9%に相当する人勧分を、職員に支給する必要があるわけです。
そして、次の図が、今年度を含む直近3年間の、「国家公務員の人事院勧告」と、「保育施設の人勧分」の関係をまとめたものです。果たして、今年度の人勧分がどの程度になるのかは、蓋を開けてみないと分かりませんが、昨年度の数値(+10.7%)までは増えないのではと見ています。
なお、ここ最近は、国家公務員の人事院勧告も、若年層の処遇を手厚くしようとしているのが、見て取れます。これに即して考えるのなら、人事院勧告を財源にして、園の若年層の処遇を相対的に手厚くするような制度設計が望ましいかもしれません。
(出典:株式会社福祉総研:今年度を含む直近3年間の、「国家公務員の人事院勧告」と、「保育施設の人勧分」の関係)
3.人事院勧告をどうとらえるか
先にも書いた通り、今年度の人勧分を、年度末賞与など一時金で支給している園は多いかと思います。一方で、過年度の人勧分(例:令和7年度に支給する、令和6年度以前の人勧14.2%に相当する金額)については、私は、一時金ではなく、毎月の基本給で支給するのが相応しいかと感じています。
くしくも、直近で、新たな最低賃金が公表されました。非常勤職員の時給改定の対応をされた(される予定の)園も多いと思います。さらには、非常勤職員の時給上昇に伴い、常勤職員との賃金差が小さくなってきていると、感じている園も多いのではないでしょうか。園に入金される人勧分は、元をたどれば、物価高騰の影響を受けて入金されるものですので、その性質を考慮すれば、過年度を含む人勧分は、毎月の基本給や手当で支給して、非常勤職員との賃金差の是正に用いるような支給方法もあるかと思います。
4.最後に
昨年は11月下旬に、人勧の改定率が公表されました。まもなく公表されるであろう、今期の数値にも注目したいと思います。
また、重ねての記載となりますが、令和7年度に支払いが必要なのは、「当年度の人勧分」のみならず、これに「令和6年度以前の人勧に対応する金額」も加えた額です。制度を正しく理解し、職員への支払いが不足しないよう、注意してください。
