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令和8年度の人勧はどうなる?保育園運営への影響とは

2026.09.30
令和8年度の人勧はどうなる?保育園運営への影響とは

毎年、「今年の人勧はどうなるのだろうか」と気にされる経営者も多いのではないでしょうか。
特にここ数年は、人勧分の改定率が高水準で推移しており、職員への還元方法や給与体系の設計に頭を悩ませている法人も少なくありません。
令和8年も国家公務員の人事院勧告が公表され、保育分野への影響が注目されています。
今回は改めて人勧の考え方を整理するとともに、令和8年度の見通しや、保育施設としてどのように対応すべきかについて解説します。

1.「人事院勧告」とは何か

(1)本来の「人事院勧告」とは

人事院は毎年、全国の民間企業の給与水準や勤務条件を調査し、国家公務員の給与との比較を行っています。その結果を踏まえ、国家公務員の給与や勤務条件について、内閣および国会へ改善を勧告する制度が「人事院勧告」です。
近年の人事院勧告は、物価上昇や人材確保難を背景に、高水準の賃上げが続いています。特に若年層の処遇改善を重視する傾向が強く、初任給の引上げや若手職員の給与改善が繰り返し行われています。

(2)人事院勧告が保育施設に与える影響

保育施設では、国家公務員給与が直接適用されるわけではありません。
しかし、公定価格の積算根拠となる「保育士等の人件費単価」が人事院勧告の影響を受けて改定されるため、最終的に保育施設へ支給される施設型給付費等にも影響が及びます。そして、その施設型給付費の増額分は、職員の給与に反映する必要があります。
つまり、

民間企業の給与上昇
↓
人事院勧告が国会・内閣に提出される
↓
政府が給与法を改正し、国家公務員の給与が改定される
↓
保育施設の公定価格の改定
↓
職員給与へ反映

という流れとなるわけです。

2.令和8年度の人勧は?

令和5年度、令和6年度、令和7年度と、保育施設における人勧分は大きな伸びが続いてきました。そして、令和8年8月7日に、人勧分の計算のもとになる、国家公務員の人事院勧告が公表されました。昨今の民間賃金の上昇の影響もあり、月給では3.51%のアップ、またボーナスも0.05ヵ月のアップとなっています。
なお、過去4年間の人事院勧告と、人勧分(給付費の改定率)をまとめると、下図のようになります。

イメージ画像

(出典:株式会社福祉総研:今年度を含む直近4年間の、「国家公務員の人事院勧告」と、「保育施設の人勧分」の関係)

国家公務員の月例給のアップ幅などを考慮すると、R8年度の人勧分は、昨年度の5.3%よりは低い率になるのではと見ています。

3.人事院勧告をどう捉えるか

人勧分は年度末賞与や一時金として支給されるケースが少なくありません。もちろん、それも一つの方法です。しかし私は、過年度分も含めた人勧財源については、可能な限り、基本給や固定手当などの月額賃金に反映させる方が望ましいと考えています。
理由は主に次の3点です。

① 職員の生活を支える給与になる
物価上昇の影響は一時的なものではありません。毎月発生する生活費負担を考えると、一時金よりも月額賃金に反映した方が、実質的な処遇改善と言えるかと考えます。

② 非常勤職員との賃金逆転を防げる
近年の最低賃金上昇により、非常勤職員の時給は大幅に上昇しています。その結果、常勤職員と非常勤職員の毎月の賃金差が縮小しているのではないでしょうか。人勧分を月額賃金へ反映することで、その差を明瞭にし、責任や役割に応じた賃金体系の維持につながると考えます。

③ 採用競争力の向上につながる
求職者が重視するのは賞与だけではありません。求人票を見た際の月額賃金も大きな判断材料になります。人勧分を継続的な給与改善に活用することで、採用面での競争力向上も期待できます。

4.人勧分の支払いについての注意点

支払い方の注意点として、「当年度分だけを支払えば良い」と誤解されているケースも見受けられます。しかし実際には、「当年度の人勧分(R7年度においては、5.3%)」と「過年度の人勧分(R7年度においては、R6年度以前の累計で、最大24.9%)」を整理して、職員への配分状況を確認する必要があります。

特に、“何(処遇改善等加算や人勧分など)”を財源に、“何(基本給、手当、賞与)”を支給しているか、自園の状況を管理・把握していないと、実績報告書を作成することもできませんし、監査においてその確認を受ける可能性もあります。いろいろな園とお話をすると、この管理ができていなくて、実績報告書の作成時に苦労をされる園が多くいらっしゃいます。たとえば、下図のような「毎月支給している手当のうち、何を、処遇改善等の財源として支給しているか。」「常勤職員の基本給や非常勤職員の時給のうち、いくらを、処遇改善等の財源として支給しているか。」「いつ、何の名称で支払った賞与を、処遇改善等の財源としているか。」を把握できる表を作成して、財源と支給している名目の整理をしておくことをオススメします。

財源 給与(支給している額、および手当の名称) 賞与(支給時の名称)
区分2
  • 【月額】基本給の中の、+2万円
  • 【時給】時給の中の、+30円
  • 【月額】処遇改善手当
  • 【夏冬賞与】基本給UPに伴う
    賞与額のUP
  • 【一時金】処遇改善加算
    (R8.3月)
区分3
  • 【月額】職務手当
-
R7年度人勧 -
  • 【一時金】人勧手当
    (R8.7月)
R6年度の残額
(区分2)
-
  • 【夏賞与】区分2一時金
    (R7.6月)

最後に

令和8年度も、人勧分の公表が近づいています。
改定率そのものに注目することはもちろん大切ですが、それ以上に重要なのは、「入金される財源をどのような考え方で職員へ還元するか」です。保育業界では依然として人材確保が大きな課題となっています。人勧分を単なる一時金として処理するのではなく、将来の組織づくりや人材定着につながる制度設計の機会として活用していただければと思います。
制度を正しく理解し、自園にとって最適な給与設計を検討していきましょう。

ライター紹介
多田善雄
多田 善雄 氏
社会保険労務士・中小企業診断士
株式会社 福祉総研 取締役
HP:https://fukushi-soken.com/
株式会社 福祉総研